『海がきこえる』(ジブリ/TV放送)、地味だけど現実感のある作品

スタジオジブリ内の若手作家”(当時)による、隠れた異色(?)のジブリ作品。
この作品は、高校生の青春ストーリー(回想で)ですが、『耳すま症候群』にはなることはなく、安心して(?)観られると思います。

高校生の恋愛、というより、男子高生のリアルな友情や、うまくいかないすれ違いや行き違いやもどかしさなどが重点的に描かれています。

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TV放送用(1993年放送)、全編72分。2011年、金曜ロードSHOW枠で、実に18年ぶりに再放送された作品(尺が短いため、『ゲド戦記』と共に2部構成)《Wikipediaより》。
他のジブリ作品は何度も地上波で放送されているのに、なかなか地上波でオンエアされなかったこの作品。金曜ロードSHOWの映画の枠としては尺が足りないとか、未成年の飲酒・喫煙シーンがあるからとか、いろいろ事情があったよう。
未成年の飲酒って……中高生あたりがビール飲んでる描写だったら問題だろうけど、この作品内では、高校の同窓会として地元・高知で開催された集まりなわけで。高校卒業した19歳くらいなら、そりゃあ大学生や社会人になって飲み会とかでひそかにお酒飲んでるだろうに。わざわざテロップで注意書きを入れるのって、どーなん?と思ったり。
ま、時代が時代でしょうか。近年は飲酒などには厳しくなっているし。
というか、小さい子供向けのアニメではなくて、確実、大人向けですね。 

主な舞台は、高知県の海辺の街

舞台は、主人公・拓の生まれ育った、高知の海辺の街。
この作品の良いところは、舞台が高知という点。あまり聞き慣れない方言も、ゆったりとした田舎の時間の流れとかも、違和感なく、いい味を出しています。
ヒロインの里伽子の、自分勝手やわがままやトゲのある性格を許せるか許せないか?がこの作品のカギ(好き嫌いの分かれ目?)となっているようですが、個人的には、里伽子に対しては嫌な子だな、という印象は特にありません。里伽子自身、高校時代を振り返って、「あの頃は、尖がってたしイタかったな……」みたいなことを思っているっぽかったし。
ただでさえ思春期の不安定な多感な時期に、両親が離婚し、ボーイフレンドや友達がいた東京から突然、高知へ連れて来られて。完全アウェイの土地や学校などの環境にも馴染めないし、親を恨んだり、表には出さないけど内面は深く傷ついていたりして。

草食系の主人公・拓は、普段はぼーっとしているけど、でも、高校生なのに、成り行きとはいえ、身勝手なヒロイン・里伽子の付き添いで東京に行っちゃったりする、お人好し(?)。しかも泊まりで。都内のホテルは1室しか取っていなかったので、ベッドを里伽子に譲り、バスルームで寝ていたという拓。可愛すぎw

印象に残っている場面は、そんな草食系の拓が、東京の大学へ進学した先での、吉祥寺駅のシーン。偶然再会した里伽子を見て、「ああ……やっぱり僕は里伽子のことが好きなんやな……」と心の中で思う拓。
この現実感がすごくいい。
あー、なんか分かるー、と。後になってから「ああ……そうか、あの人のことが好きだったんだなあ」と思う、とか。
ま、拓は“間に合った”んですけどねw
自分の過去を振り返り、“間に合わなかった”ケースばかりでも、『そういうこと、あったあった~』、『なんだか懐かしいな~』という感じです。

原作小説について

原作小説は、氷室冴子さんの『海がきこえる』と、続編『海がきこえる(2) アイがあるから』。
原作小説を読んだ限りでは、『海がきこえる』は序章で、続編の『海がきこえる(2) アイがあるから』からが本編、という感じがしました。続編(2)のほうから話が怒涛のように動くので、『1』と『続編の2』というよりは、『前編』と『後編』のシリーズ、という感じがしました。なので、“続編(2)は結局、読まずじまい”という人は、『続編』もぜひ。
しかし……残念なことに、原作者の氷室冴子さんは51歳の若さで既にご逝去されてしまったので、もうこれ以上の続きは望めないということ……。もっと長生きして、もっとたくさんの作品を生み出してほしかったのに、残念でなりません。

随分昔の小さい頃の話ですが、図書室にあった、氷室冴子さんの小説のシリーズを、なにげなく読んだらはまってしまい、夢中で読んでいた記憶があります。
海がきこえる』も、再放送で知り、「あれ? 原作は氷室冴子さん? 懐かしいなあ」と思って、小説を手に取りました。
のちのち、ご逝去されていたということを知り、なんとも言えない気持ちになりました。昔の懐かしい恩人の訃報を聞いた時のように。
でも、小説の作品は、何十年経っても色褪せずに、永遠に残り続けます。
心豊かにさせてくれた物語を、ありがとうございました。

海がきこえる (徳間文庫)

海がきこえる (徳間文庫)

 
海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

海がきこえる〈2〉アイがあるから (徳間文庫)

 

 ↓ブルーレイ化は、近年になってからのようです。

 ❰おわり❱