『おもひでぽろぽろ』(ジブリ/1991年)、印象が変わっていく思い出作品

夏のうちにと思っていた、『おもひでぽろぽろ』。
昔、小さい頃に観た時は、いまいちぴんとこなかった。
でも、大人になってから観たら、「あれ?!」と思うくらいに印象が変わった、不思議なこの作品。

ちなみに、この作品でトシオさん(柳葉敏郎さん)を、『踊る大捜査線』の室井さんを想像したらいけませんよw(←真逆です)

トシオさんの愛車

トシオさんの愛車は、小さい古い車。これ、ルパンの愛車みたいw
可愛すぎ。
でも、一番最初の、駅から本家まで、タエ子さんを乗せた車内のシーン。タエ子さん目線で見ると、『狭いなあ……初対面(トシオさんはタエ子さんのことは知っていましたが)の男性と、こんなに近いなんて』と、少し不快さを感じるくらいの距離感。
その後、蔵王ドライブでは、たくさんいろんなことを話して、どんどん『狭さ』は感じられなくなり。
そして、最後の晩の車内では、『いい感じの近い距離感』になっていました(タエ子さん目線)。
トシオさんが、どんなに小さくても古くても、愛車に愛着を持っていて、大事に思っているのが、すごくいいなあ、と思った。きっと、車の大きさで“人生のしあわせ”とかを測るような人物ではないのだな、と。

『あべくん』のエピソードが泣ける

最後の『あべくん』のエピソード。
父子家庭で経済的にも貧しかった『あべくん』。
お母さんがいない(離婚?死別?)ので、他のクラスメイトなら当たり前にお母さんがやってくれる家事(特に料理や洗濯)も、働き詰めのお父さんでは手が回らず。なので、経済的理由で、もともと衣類が少なく、しかも洗濯が間に合わないので、毎日同じ服を着ていたり(←推測)。学校から帰って、夕方にどうしようもなくお腹が空いてしまっても、食べるものもないので、持ち帰った給食の余りを食べていたり。
と、思うと、ホント泣ける。
そんな、不遇な家庭環境の『あべくん』を、汚いとか不潔だとか陰口を言うクラスメイトたち……小学生くらいの何も知らないガキって、ホント残酷だなあ、としみじみ思う。
まだ小学生なので、例えば『お母さんが癌で病死』とか、『離婚してお母さんが出て行った』などというケースは、まれだったのかも。
でも、私の小学時代を振り返ると、同じようなことがあったような。“汚い”とかでいじめられていた、お母さんがいない子がいたっけ……。
今思うと、すごくぎょっとしてしまう。その無邪気な残酷さに。
そして、再び転校することになった『あべくん』。
「最後に、みんなと握手しましょう」と提案する、超KYの担任の先生。
先生、それって強制ですか; 残酷すぎ;

ラストのシーンについて

東京へ帰る電車に乗ったタエ子さんが、途中の駅で電車を乗り換えて、戻ってきて、車で迎えに来てくれたトシオさんと一緒に車に乗って去るというシーン。
そんなラストが、なんだか唐突感あるなあ、なんだかしっくりこないなあ、と思った。
“タエ子さんが、トシオさんとの結婚を決めて、電車を途中で乗り換えて、戻った”というの?!
え?!タエ子さん、いつそんな重大な決心をしたの?! 前日の夜まで、『農家の嫁になるなんて考えもしなかった』『ただ田舎に憧れて農業体験に来ただけで、農家に嫁ぐなんて、そんな覚悟もなかった』という感じだったはずなのに。
しかも、トシオさんから直接、言われたわけではなくて、本家のおばあちゃんが本人同士の確認もなく持ち出した話だったのに。

ネット情報によると、『実は、ラストはタエ子さんが東京へ帰る電車に乗るシーンで終わりだった。あとはご想像におまかせします的な終わり方だった』のだそう(高畑監督の原案では、ということだそうです)。
さらに、↓こちらの記事を見つけ、「なるほど!」と納得。そして、「そういう展開だったら、すごく納得したかも!」と思いました。

www.asahi.com

※上記の記事を参考に、『タエ子さんは、トシオさんに対してちゃんと自分の本音を言い、ラストはこんな気持ちで戻った』という空想を書いてみます。(敬称略)
滞在最終日の夜の、帰り車の中で、タエ子はトシオに言った。
「本家のおばあちゃんに、言われたの。トシオさんの嫁に来ないか、って。でも、私は田舎に憧れていただけで、何の覚悟もなかった。ただ、休暇気分で来ていただけだったの。だから私、もうここには来られない」
「ええっ?!」
驚くトシオ。思わず、車を停める。
「ちょっと待って、なんでそうなるの?!」
うつむいたままのタエ子。慌てるトシオ。
「婆っちゃの言うことは、気にしないでください。タエ子さん、今まで通り、また遊びに来てくださいよ」
「そういうわけには、いかないの!」
タエ子の様子を見て、トシオは深くため息をついた。
「……分かりました」
トシオは真面目な顔で、タエ子に言った。
「タエ子さん……俺んとこ、来ませんか? あっ、もちろん、今すぐってわけじゃなくて……俺だって、百姓としてはまだまだ半人前で、こんなこと言える立場じゃないんだけど……」
トシオは、タエ子を真っ直ぐに見た。
「俺、ずっとここに、いますから」
その時は、何も答えることができなかったタエ子。

次の日、タエ子が東京へ帰る日。みんなが駅まで見送ってくれた。
なんとなくちゃんと答えられないままトシオと別れてしまい、タエ子は電車の窓から手を振る。トシオさん、また、会えるよね? また、あの頃のように、笑って話ができるよね? 冬に、スキーの約束したものね?
でも、走り出した電車の車内で、じわじわと実感する。どんどん遠ざかっていく景色。
「ああ……もう本当に、私はここには来られないんだ。トシオさんとは、もう二度と会えないんだ……」
タエ子は、ようやくそのことに気付く。なぜか、心の中でぽろぽろと涙がこぼれる。
“農家の嫁”になる覚悟も自信もないし、こんな短い滞在で将来のことなんて簡単に決められない。だから、あの時は返事ができなかった。でも今は、ただ、“トシオさんに”もう一度会って、話がしたい。このまま東京に帰ったら、気まずくなって、もう二度とここには来られない。トシオさんと会うこともできない。ーーそれでもいいの?
タエ子は、衝動に突き動かされて、席から立ち上がる。次の駅で、ホームの反対側に停まっていた電車に乗り込み、再び戻っていく。
着いた駅の公衆電話から、本家に電話をかける。
そして、ちょうど来たバスに乗り込む。
電話を受けた本家のおばちゃんが、庭にいたトシオを急いで呼ぶ。「タエ子さんがあんたに話があるから戻ってきたって! 今、駅に着いてこれからバスに乗るって!」
トシオは、機材を放り出して、駅へと車を走らせる。
途中で、すれ違ったことに気付いた2人。
タエ子はバスを降り、トシオは車を道端に停める。
お互いに走り寄りる(←トシオさん、ここはコケないでください。農業従事者の20代半ばの男性が、平坦な道でつまづくなんて、ありえません!)
「あ、あの、トシオさん――」
タエ子は声をしぼり出す。話したいことはたくさんあるのに、いざ対面すると、出てこない。
「――私と、握手、してくれませんか?」
トシオが笑顔で手を差し伸べる。タエ子は、その手をしっかり握る。
「農家の人の手ですね。素敵。とても」
トシオは思わず、タエ子を抱きしめる(←ここはしっかりハグしてください!)
それからタエ子は、トシオの車に乗り、一緒に道を走っていった。
その車を見送る、小学生のタエ子ちゃんとそのクラスメイトたち。

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~END~

もうひとつの可能性

改めて考えてみると、ちょっと不自然に思えた、ラストの“タエ子さんが戻ったシーン”がなければ、ハッピーエンドの物語とは思えなくなってしまいました。
『あの最後の日の夜の車内で、トシオさんに踏み込んだ話もしないまま、あのまま東京に帰っていたら、タエ子さんはもう山形へは行きづらくなってしまい、結局、その後、二度と山形へ行くことはなかった。タエ子さんは、“もしもあの時~”という漠然とした後悔を抱えながらも、東京で会社員を続けていった』となるかもしれない。
それでは哀しすぎるし、できれば2人の明るいハッピーエンドやその後を想像したいところ。

あ、あれ? なんだか“空想編”が長くなってしまいました。
もっと他に書きたいことがあったのに。
でも、今回は、ここらへんで。

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 ❰おわり❱