『雲のむこう、約束の場所』(新海誠監督/2004年)、世界観にいまいちついていけなかった

新海誠監督作品ということで、期待して観たのですが。
映像は相変わらず美しかったです。
なのですが。

ストーリーは、普通の青春もの+αの物語なのかな?と思っていたら。
全然違っていて、そしてその世界観についていけず。
約90分という中編でしたが、え?何?どういうこと?と思っているうちに、エンディング曲がかかり。
なんだか……とても分かりにくいなあ、と。

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世界観がよく分からなかった

まず、モヤっとした点は、これにつきます。
ネットをうろうろしていたら、『ジャンルはSF』ということを知り、「え?! SFだったの?!」とまた違和感。
そりゃあ、“あの塔は並行宇宙へとつながってる”とか“宇宙が見る夢”とか出てきましたが、それって物理学なんかで強引にでも解説して、SFにしなくてもいいのでは?とか。それとも、“あの塔はサユリの脳とつながっていて……”の部分かな?
そして、北海道が“ユニオン”に占領されていてアメリカと対立してる、ってことは、例えて言うなら、“ユニオン”は旧ソ連共産国)で、数十年前に再び戦争が起きて、旧ソ連が北海道に攻め込んできて軍事的に占領して、国交を完全に断絶して、“あの塔”を建てて。旧ソ連と対立するアメリカが日本を守るため(?)、青森以南を統治下に置いて、「あの塔は何だ?!」みたいな感じで警戒して一触即発、というような世界?
いずれにしても、他国に日本の領土を占領されるということは、心理的にもあまり気分の良いものではありませんね。
それとも、「そうなる可能性もあるんだから、平和ボケしてるんじゃないよ!」という警告でしょうか。
折しも、例の某独裁国が、日本やアメリカに、核ミサイル飛ばすぞ!と息巻いているようですが……本当に他人事ではありませんね。

サユリについて

ヒロインのサユリは、ヒロキとタクヤにとって、何か“特別な女の子”なのかな?と思いきや、そこら辺にいそうな普通の女の子。どんなキャラなのかもよく分からない。ヴァイオリンが弾けるっていうだけの子?
例えば、“ちょっと出てきた女子中学生の女の子のうちの1人”としてもおかしくないような感じ。
ヒロキとタクヤが、自分たちが作っている飛行機を見せる以前に、サユリと何か特別なエピソードがあったのかな?と思いきや、特になさそうだったし。サユリに飛行機を見せたのは、2人のバイト先の工場を見学したいと言ったサユリを、成り行きで連れてきちゃっただけで。
逆に、『好奇心旺盛なサユリ(という性格として)に跡をつけられちゃって、飛行機のことがばれちゃった』→『これは3人だけの秘密だよ』的な流れのエピソードがあるのかな?とか思ったのですが。
しかも、サユリが本当はヒロキのことが好きだったと判明したのはけっこう後のほうで、中学時代のサユリは、“結局、ヒロキとタクヤのどっちが好きなの?”という感じ。同級生の男2人から好意を寄せられて、でもどっちか1人を取ると3人の仲が壊れてしまうから、あえて本心を隠してた、のか、それとも……。
いまいちサユリに人間性というか現実味がなかったので、もしやサユリは、ヒロキとタクヤが一緒になって作り上げた、“想像の中の理想の女の子”だったとか?!なんて思ってしまったり。
というか、ヒロキとタクヤは、それほどの熱意を持って、サユリのことが好きだったのか?というのもそもそも疑問だったり。

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あの塔は、何だったの?

SF(小説やアニメなど)で言えば、地上から空へ宇宙へとのびる塔は、宇宙エレベーター
でも、ここでは、イマイチよく分からない存在。
あの塔は、兵器だとか。
あの塔が、サユリの脳とつながっていて、サユリの眠りがあの塔の動きを抑えているとか。
だから、彼女には眠ってもらうしかない、とか。
そんな独特な世界観。
そして、ラスト、眠り続けていたサユリを乗せて、自分たちで作った飛行機であの塔へと飛び立ったヒロキ。
“約束の場所”へ。

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サユリとは、中学時代に、“あの塔まで飛行機で行こう”と約束。その後、サユリのいた東京の病室を訪れたヒロキが、夢の中のサユリと、“あの塔まで行く”約束を再確認。
予想通り、あの塔に近付くと、サユリが目を覚まします。
そして、塔を離れ、塔にミサイル弾を撃ち込み、塔は爆発して消えていく。同時に、サユリの今までの記憶も消えてしまう。
そのことに泣くサユリに、ヒロキは、大丈夫だよ、目が覚めたんだから、と言い。
そして、エンディング。
――ええ?! 終わり?!
ちょっと置いてけぼり感が。

中学時代と“その3年後”にギャップがありすぎ

中学生で工場のバイトできるのか?!ということはさておき(そういう世界観ということで)、岡部さんの工場でバイトをして、「あの塔まで飛ぼう」という同じ目標を持ち、ひそかに部品を集めたりプログラムを組んだりして、2人で飛行機を作っていた、ヒロキとタクヤ
飛行計画も具体的に立てていたし、パーツ集めも違法すれすれで岡部さんに協力してもらったりして集めて、組み立てて。
改めて考えると、かなりのハイスペック中学生?!
それでも、中学の頃は、あの雲の向こうに見える“あの塔”に漠然とした憧れを持ち、同級生のサユリに憧れていて。
中学校の教室。
田舎の電車の中。
廃線となった駅舎。
飛行機作りにしていた秘密基地のような古びた倉庫。
なんだかノスタルジックでよかったです。
そして、その3年後。
“サユリが消えた”という描写はなく、あとからヒロキのモノローグで分かる程度。
ヒロキとタクヤは別々の道へ。ヒロキは東京の高校に進学し、タクヤ津軽の研究室に研究員として勤務。
え? 高校生だよね?
ヒロキはともかく、タクヤの豹変ぶりにはついていけないほど。変わりすぎてビックリ。
ヒロキ、高校は東京に進学したの? 一人暮らし? 親はよく許したね? てか、親、いるよね?
『あの塔が見たくないから、見えないような東京の高校へ行った』という、なんだか時間が止まってしまったようなヒロキ。『待ち合わせをしているふりをして駅へ行き、時間をつぶす』って、そんなことしてても前に進めないよ……?と岡部さんじゃなくても心配しますよ。
対して、タクヤ。高校生で、“あの塔”の研究をしている研究室に出入りしてるの? しかも、公安に目を付けられてる岡部さんのもとで、何かヤバそうなことしてるし。タクヤ、船の中で撃たれて死んじゃったかと思った……よかった、生きてて。
そんなタクヤ、タバコふかしてるし、帰省したヒロキに銃、突きつけるし。銃も手慣れたように扱えるようになっていたタクヤにちょっとショック。
そして、タクヤは、研究室の先輩の真希さんに「真希さんに会えたこともうれしかった」と、真希さんを口説いてる?と見せかけて(?)、完全ノーガードの真希さんのIDをあっさりと奪い、「全部終わったら、もう一度、真希さんに会いたいです」と、“これから俺、戦場に行きますんで”、みたいな調子で言い。
そして真希さんのIDを使って、研究室に移されていたサユリを連れ出したタクヤ。片腕を怪我してるのに、片手だけでサユリを連れ出せたのか? 車を余裕で運転してたけど、高校生で運転できるのか?(車はオートマで、そういう世界観ということで)などと、タクヤの超人ぶりと行動力に、ただならない覚悟を見せつけられ。
てか、やっぱ、別人みたいで怖いよ、タクヤ
でもタクヤ、あっさりと許されそうなことしてるけど、もし、“サユリが研究室からいなくなった!”と騒ぎになったら、IDを使われた真希さんが真っ先に疑われるよ? 真希さんが公安とかに捕まったりしたらどうするつもり?と心配しましたが。後日談は描かれていないので、真希さんの身の安全を願うばかり。

そして、ヒロキに、「サユリを救うのか、世界を救うのか」と迫ったタクヤ
……ええと、どういう意味??
サユリを目覚めさせようと塔へ行こうとするヒロキに、塔に行ったらサユリは目覚めるけど、塔の周辺の世界は並行宇宙に呑み込まれる(=消失する)けど、それは分かってるか?覚悟はあるのか?と問いたかったのかな?
でも、どっちにしろ、『“あの塔”を破壊する』しか選択肢がなかったのだから、たとえサユリの記憶が消えてしまうことになっても、「それでもいい」とヒロキは思っていたのだし。
なんだか、そんな大ごとになっていた世界観。

その後、どうなった?

冒頭で、大人になったヒロキが登場しましたが。
ボソボソとしゃべるので全然聞こえなくて、音量上げましたよ(声優さんを責めているわけではありません)。
大人になり、帰省して、あの場所に行ったヒロキ。
サユリは一緒にはいない。
そして、もちろん、雲の向こうには、“あの塔”もない。

“約束の場所をなくした世界で、僕たちは生きていく”

つまりは、“あの塔”は、憧れとか、無邪気でいられた中学時代までの楽しかった記憶、の象徴? 何も知らずに、ただただ明るい未来を夢見ていた頃や、淡い初恋、の象徴?
そういう場所は、憧れのままにしてもう近づかないか、もしくは自らそんな場所なんて壊して、子供の頃の憧れは自ら葬ったほうがいい、ということでしょうか……。
ちょっと、せつない。
でも、それが“大人になる”ということなのでは?
そんな場所をなくしても、生きていかなきゃならない。つらくても。

あの場所へ行く途中で通り抜けるお墓(墓石)でちらりと思ったのですが、大人になったヒロキは、あの場所へ、お墓参り的な感じで訪れたのかな?とか。
過去の記憶が眠るお墓として。
でもそこには、もう何もなく。もう誰もいなく。
“あの塔”もなくなった荒涼とした景色があるだけ。
でも、そんな過去の“お墓参り”に、行かずにはいられなかったのかも。

❰おわり❱