『言の葉の庭』(新海誠監督/2013年)、前編~あらすじ&感想

本編約46分という比較的短いアニメ映画です。
この作品、すごく心にぐさぐさきます。でも、トゲのある針ではなくて、やわらかい新緑の若芽のような。
前編と後編に分けて、語ってみたいと思います。
※ネタばれ前提です。以前のものを再編集&分割しました。

画の美しさは相変わらずですが(本当に美しいですね……雨の感じとか、新緑の感じとか)、世界観とか、年の離れた男女とか、ストーリーとかエンディング曲とか。余計なものをそぎ落とした、美しい作品だと思います。

f:id:natsusakana777:20170909165944j:plain

あらすじ&感想

主人公のタカオは高校1年生、6月現在15歳。16歳になる年だけど、誕生日がまだ来ていないので15歳。

15歳……若いなあ、としみじみと思います。行動とか言ってることとか。若いからこそできる行動とか、若いからこそ言える言葉とか。既に“大人”になってしまった大人(ユキノさん含む)は、もう失ってしまったそういう部分がまぶしく見えるのです。

タカオは、家庭環境もけっこう苦労人。父親はいないし(離婚)、母親はお酒飲んだり“年下の彼氏”のところへ行ったりとふらふらしてるから、家事もやらなきゃいけないし(なので料理は得意)、ひそかに狙っている専門学校(パンフレットも既に入手済み)の学費も自分で稼がなきゃいけないからバイトもしている。革靴を作るための道具や材料の革も買い、靴作りにひそかに励んでいる。靴職人になりたいという夢は、誰にも言っていない。大人に言ったら「バカか!」と笑われるのは分かっているから。
本当にやりたいことがもう決まっているから、内心、「学校なんかに行ってる場合じゃない!」と思っている。だから、梅雨の時期に、『雨の日の午前中だけ』と決めて(←これでもタカオなりに譲歩しているんです)、学校をサボって、公園(新宿御苑)で靴のデザインを考えたりスケッチをしたりしている。

“靴を作ることだけが、俺を違う場所に連れて行ってくれるはず”

家庭環境も厳しくて、現実も厳しいのは分かっている。でも夢をあきらめて、普通に勉強しようなんて思えない。趣味なんかじゃない、どうしてもやり遂げたい夢がある。

そんな時、タカオは、公園で年上の女性と出会います。
彼女は、昼間からビールを飲み、つまみはチョコ。

「どうせ人間なんて、ちょっとずつおかしいんだから」

はい。その通りですよ。
名前も知らない同士の2人は、雨の日だけ、逢瀬を重ねます。
特に会う約束をしたわけではありません。ただ、雨の日にあの公園のあの場所に行けば、あのひとに会える。そう期待していただけ。
現代のスマホ時代に、メールやLINEは登場しません。もちろん、電話番号交換もしません。通りすがり同士、ほんの少しだけの雨宿りのような時間。だからこその距離感。背景は、美しい日本庭園。

そして、タカオは、公園で出会った『ただの通りすがりの、名前も知らない』という大人、『年上の女性』に惹かれ、心を許し、自分の夢を話します。

  f:id:natsusakana777:20170909170011j:plain

そうしているうちに、梅雨が明けてしまい、雨の日はなくなり、タカオは公園に行く口実がなくなってしまいます。
2人は会えなくなります。
夏休みになり、2人はそれぞれの時間を過ごします。タカオは専門学校の学費を少しでも稼ぐために、バイトに明け暮れます。

――あれ? 全体の半分終わっちゃったけど、どうなるんだ?と思ったその時。
夏休み明けの9月。
ここで急展開! タカオは、高校の廊下で、『公園で会っていた年上の女性』と、すれ違います。はっとして振り返るタカオ。「ユキノ先生!」と、駆け寄る女子生徒。
公園で会っていた女性は、実はタカオの高校の教師でした。しかし退職することになり、今日は学校には挨拶に来ただけとのこと。あの梅雨の時期にユキノ先生が公園にいたのは、精神的ダメージにより、学校に行けなかったから。
ユキノ先生いじめの事情を聞いたタカオは、主犯格の3年生の女生徒のもとへ行きます。高校1年生と3年生の上下関係なんておかまいなしに、3年生の教室に1人で乗り込みます。そして、女生徒の顔を殴ります。おおっ! すごい行動力だなタカオ! 見直したぜ! ま、顔を殴るで正解だったと思いますよ。相手は仮にも女の子なので、変にボディを殴ったりしたら、セクハラだのと騒がれそうだし。手や足を狙っても、物足りない(?)し。やはりここは顔。そして、タカオは、女生徒の取り巻きたちに返り討ちに遭います。

そんな絆創膏だらけの顔で、雨は降っていなかったけどあの公園のあの場所へ行ったタカオ。やはり彼女はいない……と、思った時、池のそばの藤棚の下にいるユキノさんを発見。
「ユキノ……先生」。
都内にはたくさん高校があります。公立私立、近い場所、ちょっと遠いけど通える場所、交通手段も発達しているし、どこでも選び放題。「通える範囲内に、高校が数校しかない!」なーんていう田舎とは違います。うらやましいな; そんな東京の高校の、教師と生徒だった2人。偶然というより、これはもう、必然ですね。
そして、久しぶりに会ったその日、突然、雷が鳴り、雨が降り出します。激しい雨。そうでした、季節は移り変わり、もう梅雨のやわらかい雨ではなくて、夏の終わりの激しいゲリラ豪雨
雨に降られた2人は、ユキノさんの部屋へ行きます。

タカオが料理をして、2人で食べます。オムライス、めっちゃ美味しそうだな!
ユキノさんがちゃんと笑っている顔を、初めて見た気がします。ビールとチョコの生活をずっとしていたユキノさんにとって、こんな美味しい食卓は久しぶりだったのかも? それとも、もうビールとチョコの生活は卒業できたかな?
コーヒーを淹れて、タカオにもふるまうユキノさん。
2人のモノローグが入ります。
そして、タカオは、ユキノさんにさらりと告白。……言っちゃうんだな。素直に言えるのだな。これが小ズルい大人だったら、きっともっと駆け引きしたりする。でも、タカオは駆け引きなんて、しない。

「ユキノさん、じゃなくて、先生、でしょ」
「来週、引っ越すの。四国の実家に」

ユキノさんがやんわりとかわします。ユキノさんは、この東京のマンションを引き払い、四国の実家ではなくて、次の赴任地の飛騨地方へと旅立つことが決まっていました(仮)。

「だから、今までありがとう」

……いや、お礼を言ってほしいわけじゃない! タカオは、ユキノさんに借りた服を返すために、まだ乾ききっていない制服に着替えます。借りた服、メンズものっぽいけど、ユキノさんの元カレの服なのか? そんな服、一刻も早く脱ぎ捨てたい!とタカオは思ったことだろうと。
帰ります、とユキノさんの部屋を後にするタカオ。
バタン、とドアが閉まります。ドアが閉まる前に、タカオを引き留められなかったユキノさん。しばらく椅子に座ったまま。そう、大人はこうなってしまうのです。すぐに行動したり、衝動的に言葉を発したりは、できないんです。フリーズしてしまうんです。
そのまま駅へと行ってしまわずに、階下の非常階段の踊り場で立ち止まり、もうすぐ止みそうな雨の空を見上げていたタカオ。立ち止まってくれて、ありがとー!!! ユキノさんに時間をくれて、ありがとーー!!!
そして、そこへ、非常階段を裸足で駆け下りてきたユキノさん。ま、間に合ったーーー!!!
そんなユキノさんに、タカオはありったけの気持ちをぶつけます。

「あんたが教師だと知ってたら、夢のことなんて話さなかったのに!」

「あんたはそうやって――独りで生きていくんだ!」

思わずタカオに抱きつき、ようやく声を上げて泣くことができたユキノさん。
雨が止み、夕陽の光が差してきます。
エンディングの曲が流れます。
ううううう…………(←ぼろぼろ泣き中)

  f:id:natsusakana777:20170909170000j:plain

秋が来てタカオの制服は長袖になり、冬が来てあの公園にも雪が積もりました。
タカオのもとに、ユキノさんから達筆な手紙が届きました。このメール時代にわざわざ直筆の手紙です。
タカオは思います。

“いつか、もっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう”

うん……まだ途上だしね……今すぐには会いに行けないよね……。でも、3年後でも5年後でもいいから、ユキノさんのもとへ会いに行ってほしいです。というか、必ず行くんだぞ、タカオ!

ラストでちらりと映るユキノさん。教壇で授業をしています。窓の外にふと目をやると、雲の切れ間から山々に光が差し込んでいました。ここは、あの飛騨の高校ですね? 窓の外の景色は、あの飛騨の山々ですね? ユキノさん、ちゃんと教師に復帰しました。今度はうまくやっているようです。よかった……。

小説版について

登場人物の詳細や、タカオとユキノさんの後日談が書かれている小説版も出ているようですが、私は未読です。
読もうか読まないか迷い中です。読まないままで、いろいろ空想していたほうがよかったり?と思ったり。

 後編はこちら:

natsusakana.hatenablog.com

❰つづく❱