夏魚、空を行ってみる

アニメ好きによる感想、空想、つぶやき。

『秒速5センチメートル』(新海誠監督/2007年)、あらすじ&感想。

新海誠監督の2007年のアニメ映画。
実に10年前の作品(!)。
とにかく、映像が美しいです。
ストーリーは、第1話・第2話・第3話の全3話構成。

私がこの作品を一番最初にたまたま観た時(何年前だったか忘れましたが……公開当時ではありません)は、その映像美にひたすら驚き。
その後、内容をうっすらと忘れかけた時に観た時は、第2話『コスモナウト』の視点者・花苗ちゃんに感情移入してぼろ泣きしたり。
その後、また観た時は、なんだかひたすら鬱々としてしまったり。
観た時の年齢、立場、心境などによって、感想が変わってくる映画なのかもしれません。
なので、一回観て「もういいや」と思わず、5年後10年後20年後などに観ると、また違った視点で見られるかもしれません。
中高生の時と、それから10年後の20代半ば以上になってから、そして30代40代、それ以上になってから、と、観た時では、印象は変わってくると思います。

小説版、漫画版もあるらしいのですが、未読なので、アニメ映画版を観た限りの感想を書きます。

 

第1話 桜花抄(おうかしょう)

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舞台は、1990年代前半頃の東京の小学校。
貴樹と明里は出会い、淡い初恋をします。
中学に上がる時、明里が栃木へ転校。微妙な距離に離されてしまう2人。
ケータイがまだ普及していないので、連絡を取り合う手段は、主に手紙(文通)か電話。電話は、家の電話や公衆電話から。でも、相手先への電話は、相手の親が出る可能性が非常に高いので、なるべく避けたい。ましてや小中学生で異性に電話するなんて、ハードル高すぎ。なので、よほどの緊急時でなければ、手紙のほうが気軽です。

中学1年生の終わりに、貴樹が鹿児島(種子島)へ転校することになり、貴樹と明里はその前にと、会う約束をします。
おそらく、“約束の日”も、文通で日にちを決めたのかと。
「学校が休みの日曜日に約束すればよかったのでは?」などと疑問に思いますが、貴樹は厳しい運動部に入っていたため、日曜日も部活。まだ下級生の1年生だったし、日曜日の部活はサボれなかったのかもしれません。それに、明里も厳しい部活に入っていて、やはりサボれなかったのかも。
でも、平日の学校が終わってから、東京から電車を乗り継いで行くというのに、約束の時間が『栃木の明里の家の最寄り駅に19時』って、さすがに遅すぎなのでは? 貴樹は、帰りはどうするつもりだったんだ?と、いろいろ疑問はわきますが。
でも、おそらく、貴樹は引っ越しの日が迫っていて、“もうこの日しかない!”という、ギリギリの日にちだったのかもしれません。

その“約束の日”は、たまたま関東で大雪が降った日。
関東の平野部では、めったに雪が積もらないため(ちらちらと降る程度)、電車は雪に弱いです。特に、都心~郊外への電車は、けっこうな割合で遅れたり、停まったりします。
それに、郊外に行くにつれて、“駅と駅との距離も乗車時間も長い”です。都内の電車、例えば山手線のように「次の駅が見える!」ということは、まずありません。貴樹のモノローグで、“駅と駅の間が信じられないくらいに長くて……”のように言っていましたが、貴樹の心理的な状態もあるし、実際もそうです。
個人的な話ですが、東京に出てビックリしたことのうちの一つが「ええ?! 次の駅、見える!?」でした。田舎の鉄道では、まぁないですねw

お互いに、心細く思いながらも、それでもひたすら再会を願い。
「電車、停まっちゃったから、会うのはまた今度にする?」「そうしようか?」などというメールという手段もないし、いつでもまた会えるというような距離ではありません。そこは中学1年生、13歳。東京と栃木という微妙に遠い距離。大人になってしまえば、日帰りで気軽に行けるような距離ですが、中学1年生にとっては、よほどの覚悟がないと行けない距離。
それに、2人には、『また今度』は、きっともうないのです。貴樹はもうすぐ、もっとずっと遠い場所へ引っ越してしまうし、『今日を逃したら、もう会えない』という状況だったのだろうと思います。
だから、どんなに心細くても、歯を食いしばってでも行きたかったのだろうと。

そして、約束の時間に大幅に遅れながら、ようやく約束の場所の駅にたどり着いた貴樹。
駅舎のストーブの前のベンチで、明里は待っていました。
そうして2人は、再会することができました。

明里が作ってきたお弁当を一緒に食べたり、とめどなく話をしたり。そうしているうちに、もう遅いし電車ないから、と駅舎から締め出されてしまった2人。
 明里は「寒いしもう遅いから、うちに泊まっていかない?」と戸惑いながらも言わないのか?
 貴樹は「今日は友達の家に泊まるから」と、親に電話はしないのか?
 ボロい納屋の古い毛布にくるまって……って、暖房もない郊外の冬の雪の夜なら凍死するぞ!
 そもそも、中学生が無断外泊って……2人それぞれの親から捜査願い出されるぞ!
という、現実的な描写はなく。
凍えて痛いほどの寒さや、納屋にあった古い毛布の糞尿みたいな臭いなどは伝わって来ず。
ただ、ひたすら雪が舞う、美しい世界に、2人だけの世界。
では脳内補足。駅の公衆電話から、2人とも、それぞれの親に「今日は友達の家に泊まる」と電話してから、駅舎を出た、ということにします。

次の日の朝、電車で帰る貴樹。見送る明里。
お互いに、書いた手紙は渡せませんでした。

 

第2話 コスモナウト

舞台は、貴樹の転校先の、種子島
貴樹は、高校3年生。

貴樹に想いを寄せる花苗……せつなすぎ;;
中学2年の時に貴樹が転校してきてから、高校3年までの間、実に4~5年間くらい一途に片想い。
朝、貴樹に「おはよう!」と言うために、校舎の陰で待ち伏せしたり。
帰りには、一緒に帰りたいために、やはり校舎の陰で貴樹の帰りを待ち伏せしたり。
とにかく、一生懸命、偶然を装って、貴樹に近付きます。
けなげすぎ;;

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貴樹は、“やさしい”。迷惑そうな顔もしないし、拒絶したりもしません。それどころか、「じゃあ、一緒に帰ろう」などと言ってくれます。
元来の性格に加えて、転校生ならではの『みんなと仲良くしなきゃ! みんなにやさしく振舞わなきゃ!』という思いもあったのでは、と思います。
もちろん、花苗にも、やさしい。でも、誰にでもやさしい。


そんな花苗は、高校3年生になったのに、進路も決まらないし、得意のサーフィンでスランプ。
そして、“半年ぶりに波に乗れた!”という日。
「今日こそは、遠野くんに告白するんだ!」と決意。
その日の帰り、例によって待ち伏せして、貴樹と一緒に帰った時。いつものように、売店で紙パックの飲み物を買います。花苗は、貴樹と同じコーヒーを選びます。貴樹よりも小さめのパック。
……花苗、コーヒー、どんな味だった? 苦かった? 今後、コーヒーを飲むたびにこの日のことを思い出してしまうかも……(泣)。
売店で、花苗の原付が調子悪くなり、歩いて帰ることに。貴樹も送ってくれると、一緒に歩くことに。告白の絶好のチャンス、と思いきや。
「もう、私に、やさしくしないで」と泣き出す花苗。
その時、ロケットが打ち上がります。

“遠野くんが、私を見ていないことを、私ははっきり気づいた。だからその日、遠野くんに、何も言えなかった。”

ううう、、、言えないよね(涙)。

……というか、その気がないなら、やさしくするなよ、って感じですね。気を持たせるようなことするなよ、って。
その夜、泣きながら眠る花苗。


→貴樹が高校3年生の時にはすでに、明里から手紙やメールは来なかったようです。貴樹との関係はもう無理だと感じた明里が、別れの手紙を送り、貴樹は振られてしまった、とか?
もし、明里から手紙やメールが来ていて、2人のつながりが少しでもあったなら、貴樹は“宛先のないメール”をただただ書いていたり、“隣に明里がいるという幻想”を何度も見たりすることはなかったと思います。なので、明里はこの時すでに、貴樹とは別の道を歩いていたのでは、と思います。
貴樹は、“初恋”ではなくて、“失恋”を引きずっていた、とか?(どっちでも同じようなものか?)
そんな貴樹にとって、花苗の気持ちは内心、うれしかったけど、でもそれに応えることはできなかったので、つかず離れずの距離を保っていた、とか。
どっちにしろ、貴樹、それは“やさしい”とは言わないぞ!

 

第3話 秒速5センチメートル

第2話が1999年(高校3年生、18歳)、この第3話は2008年だそうです《Wikipediaより》。
と、いうことは、第2話から9年後、27歳くらいの社会人になった貴樹。
――え! そんなに年齢いってたのか!と後から気付いて、ちょっとビックリ。

貴樹のケータイに、“3年間付き合っていた彼女”の水野さんから、メールが来ます。別れのメールでした。

『1000回メールしても、心は1センチも近づけませんでした』

貴樹、ちゃんと返信したんだろうな?(←あやしい)

27歳くらいで3年間付き合っていた、ということは、24歳~27歳くらいまで。
相手の女性(水野さん)も、おそらくそのくらいの年齢のよう。というか、水野さんと貴樹は、元・会社の同僚で、知り合ったのも職場っぽい? 貴樹が水野さんと付き合ったのは、手近にいたから? 水野さんからのアプローチで手っ取り早く?
水野さんは、もしかしたら、貴樹との将来も思い描いていたかもしれません。でも貴樹は全然その気はなく。

水野さんが気の毒すぎる……。

貴樹が会社を辞めたのは、この彼女と別れたかったのもあったのでは?と穿ってしまいました。なにせ、貴樹は“やさしい”から。自分から別れを切り出さず、彼女を傷つけてしまうことを恐れ。なので、そろーっと離れて距離を取り、自然消滅を狙う。そんな貴樹とは別れることに決めた水野さん。賢明な判断だったと思います。
というかこの水野さん、眼鏡をかけていたりして、パッと見、地味だけど、眼鏡外して髪の毛おろしたら、明里(貴樹の幻想の中)に似ていたのでは?
貴樹……おまえ一体、何人の女性を泣かせたら気が済むんだ?!


そして、めちゃくちゃ美人さんに成長した、大人になった明里。
そうでした……第2話でちらちらと出てきた明里は、貴樹の幻想の中の明里でした;

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明里は今度、結婚することになりました。もちろん貴樹とは別の男性と。
明里も貴樹と同じ年なので、27歳くらい。これはもう……もし、明里もその気があれば、とっくの昔に貴樹と再会するなり、その後交際するなりしていただろうと思います。でも明里は、随分昔に、貴樹のことは思い出にしていました。なので、“主人公2人が結ばれるというハッピーエンドにはならない”ことは明白です。
というか、貴樹と明里は、あの雪の日の再会以来、対面して会ったことはなかったのですね? あの時は中学1年生、13歳。現在は27歳。それならもう……確実に別々の人生を歩んでいますね。

 

“いつかまた、桜を見ることができると、何の迷いもなく思っていた”

貴樹のモノローグの後、突然、エンディング曲がかかります。
――え? ええ?! 終わり?!
と、毎回、呆然。

ちらりと出てきた、種子島で、貴樹の飛行機を空港で見送る花苗。貴樹に、ちゃんと告白できたかな? 告白して、ちゃんとケリをつけられたかな?
花苗は、サーフィンという取っ掛かりがあるのだから、高校卒業したら、ハワイとかオーストラリアに行って、本格的にサーフィンをやってプロを目指す、とかしてほしいです。貴樹のことは思い出にして、ちゃんと前を向いていってほしいです。花苗ならできる!!

東京での、電車の窓越しのすれ違い。この場面、『君の名は。』のラストでも同じようなカットがあったな? 貴樹を見てしまうと、“まだ会ったこともないし本当にいるかどうかもあやふやだけど、きみを探してるんだ!”と走り回った瀧(22~3歳くらい)が、すごくピュアでまともに見えてしまった(←『君の名は。』の感想内で、瀧のこと、ボロクソ言ってしまってごめんなさい;)。

ラストに、あの踏切で、貴樹は明里らしき女性とすれ違います。
その時、遮断機が下りてきて、電車が通過。
上下2本待ち。
遮断機が上がった時には、向こうには明里(と思われる女性)の姿はありませんでした。
ようやく吹っ切れたような顔をして、歩き出す貴樹。

 

ラストについて

もし、あの踏切で、電車が通り過ぎた後、明里(あの女性が明里だったとして)が向こう側にいたら、何かが変わっていただろうか?

いや、変わらないと思う。
「……お茶でもどう?」とかいう展開だったら、逆に「ええー?!(なんか違くね?)」ってなります。
言葉なんて、もう、交わすことすらできないくらい、遠く遠く離れてしまった心の距離。だからもう、言葉なんて交わせなかったと思うんです。それこそ、この世とあの世くらいの途方もない距離。相手は死んではいないけど、もう亡霊みたいなもの。

ちょっと譲歩しても明里は、貴樹に気付いて、振り返って立ち止まっていた。遮断機が上がった後、貴樹に小さく手を振って、背を向けて行ってしまった、とかが限度かと。
いや、やっぱり現在の明里だったら、遮断機が上がるまで立ち止まって待っていないと思う。

とにかく、ラストで、貴樹はようやく「ああ、明里はもう過去なんだ」と現実を受け止め、前を向いて歩き出した。
と、いうなら、貴樹にとっても“ハッピーエンド”なのでは?と思います。

 

総感想

この作品は、「観よう観ようと思っていても、なかなか気が進まない」という、不思議な作品。でもやっぱり、桜の季節とかになると観たくなってしまったり。
桜のように、儚く、せつない、それぞれの想い。
「もし、距離による隔たりがなかったら?」「もし、あの時に、ちゃんと言えていたら?」。もしそうしていたなら、何かが変わっていただろうか?
ももう、時間は戻らないし、過去に戻ってやり直せるわけもなく。
目の前の現実を、受け止めて、歩いていかなきゃいけないのだな、と。
しんどいですけどね。

 

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❰おわり❱